久しぶりに店内飲食のお昼ご飯。甲賀町通り鐘撞堂の石垣を曲がっていつものあの人のお店に駆け込んだ。

そしていつものように「今日は何を食べると幸せになれますか？」という質問を口に出そうとした矢先「今日はいい時に来らったなし」と大将にまず先手を打たれた。

「コシアブラの炊き込みご飯作ったがら食ってがせ」

こういう時は自分の嗅覚の良さを自慢したくなる。コシアブラの炊き込みご飯なんて麦とろさんでも年に一度ぐらいしか作らないメニュー。

コシアブラの炊き込みご飯を軸に、破竹と身欠鰊の煮物、鮪のトロ刺し、高郷村の美味い豆腐、いつものポテサラ、わかめの味噌汁が並ぶ。こんなの日本中どこのお店に行ったって食べれないだろう。炊き込みご飯はコシアブラがフワッと香る。破竹は孟宗竹よりも香りが優しく甘く香り身欠鰊の旨味のある脂をまとって箸が止まらない。鮪も素晴らしい脂の乗り具合でたっぷりとわさびを乗せて食べる。高郷村の豆腐は絹ごしなのにしっかりとした硬さと濃厚さがあって豆腐そのものが美味しい。ポテサラはいつもいつも麦とろさんに行く楽しみの１つで今日も裏切ることなく圧倒的に美味い。

「緊急事態宣言解除されたけどウヂはいっつもと同じようにやってだ」

大将が笑う。

「地元のお客さんいる時は、県外から来らったお客さん丁寧に断ってだげんじょな、いねがったら入れでくっちゃわい」

大将とコロナ禍の話をしたけれど、彼はいつもと同じように当たり前の日常をただこなしていた。この季節に吹く風の良い香りがすること、忘れてはいまいか？その風を胸いっぱいに吸うだけで我々は幸せになることが出来る。幸せを感じたくなったら、麦とろに行けば良いよ。