キヨミズ通りの細いクランクの奥まった場所にあるこのお店、いつも通るたびに気になっていた。
夜に開くお店しかない一帯でランチの看板が出ている。出ているがなかなか入る勇気が出ぬままだったが、台風一過の気まぐれか中に入ってみた。
入口のボードに「ポーク生姜焼き」とあったのでそれを注文した。
「ウチは特にメニューとか関係ないから〜」
気さくな女将さんは一見さんである俺に話しかけてきた。コップに入ったお冷と、南アルプス天然水の500ccの空きペットボトルに入ったお冷をドンとテーブルに置く。飲みかけのミネラルウォーターみたいでジワジワとツボに入っていく。
「新聞読む?」
とジェスチャーで促してきたのが旦那さんらしい。旦那さんはカウンターに座って、時々女将さんを手伝う。常連さん達も時々話しかけてきた。どこから来たの?いやいやこの辺ですよ。初めて?そう初めてです。そんな会話。
隣のソファ席の常連さんはサンマ焼き定食を注文していた。
「ほんと最近のサンマは細くて小ぃーさくてサヨリちゃんみたい」
と言って小さい小さい焼きサンマを運ぶ。女将さんがいちいち面白い。

そうこう話しているうちにポーク生姜焼き定食はポークチャップに変わっていた。ポークチャップ、焼きサバ、マグロの刺身にご飯という充実の内容の定食が運ばれてきて気分も上がる。



「あ、味噌汁忘れてたわ。ちょっと塩っぱそうだったからお湯でうすめたね〜。今日は小松菜と油揚げの味噌汁よ」
遅れて運ばれてきた味噌汁も美味しい。
「コーヒーも付くけどアイスコーヒー?」
逆らわずアイスコーヒーにした。俺がこういう時にアイスコーヒーしか飲まないのを察したのかと、一瞬ドキッとした。
概ね定食も食べ終える頃にまた遅れてやってきた。
「ウチは明治から牛乳は買わないけど、豆腐届けてもらってんの!」
生姜の乗った冷奴が運ばれてきた。チューブじゃなくちゃんとおろした生姜で美味しい。
いやー、満腹だ。そろそろ帰ろうかなと思ってるとまた何か遅れて運ばれてきた。
「こっちトマトな〜、こっちブドウな〜」
ミニトマトと巨峰が入ったグラスはしっかり冷えている。そしてミニトマトもブドウも美味しかった。
そして今度こそ帰ろうかなと思ったらマスカットらしきブドウも持ってきてくれた。
思い出したように遅れて遅れてやってくる食べ物たち。
なんだか不器用で照れくさいような優しさを感じた。


夜の帷を捲り上げるように店の外に出ると、曇り空だけど少し柔らかく眩しい空気が霧雨のように目に飛び込んできた。出口の傍で猫もご飯を食べていた。
店舗名 | グランパ |
住所 | 会津若松市宮町4-4 |
営業時間 | 詳細不明 |
電話 | 0242-23-8895 |
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